第2回研究会報告

2015年度第2回古写本『源氏物語』の触読研究会

日時:2015年10月23日(日)15時00分〜17時00分

場所:社会福祉法人 京都ライトハウス・地下1階研修室3

参加メンバー:伊藤鉄也、広瀬浩二郎、大内進、渡邊寛子、尾崎栞、関口祐未(6名)

 

 10月23日(金)京都ライトハウスにおいて第2回研究会が行われました。

 今回の研究会から、新たな研究協力者として渡邊寛子先生、触読実験に協力してくださる尾崎さんを迎え、研究発表・研究報告や意見交換などがなされました。

 以下、問題点や意見を整理します。

 

1.触読について

 触読体験や触読実験の方法について、自由な意見が出された。

  • 盲学校では、全盲の教員は社会科に比較的多いが国語科はほとんどいない。書道の単位を取るのが難しいため。採用試験に通るのも難しい。また、漢文を教えるのが難しい。
  • 尾崎さんが変体仮名を読むきっかけとなったのは、大学で、変体仮名を読む授業が必修だったから。はじめから変体仮名に興味があったわけではなかった。大学1年生のときに源氏物語絵巻と出会い、その美しさに惹かれた。絵巻に興味があった。
  • 触読は、目が見えていた経験の有無が大切。先天盲、後天盲の違いがある。目が見えていた経験があると、文字のイメージが頭のなかにあるので読みやすい。
  • 「後天盲」という言葉はあまり使わない。「中途失明」「中途視覚障害」の方が穏やか。

 

2.6月から10月までの活動報告

 本科研の6月から10月までの活動内容の報告と、今後の予定について説明がなされた。

  • 開発したいと考えている古写本の触読学習システムとは、タッチパネルの上にA4判の立体コピーを置き、変体仮名の1文字をシングルタップ・ダブルタップすると音が出るしくみを考えている。パソコンを使わず、指で押して認知するシステム。ブルートゥースでスマホに送るなど。
  • 考えているような触読学習システムは昔からある。生まれては消えていく。長続きしない。ユーザーが満たされない。売れないのが問題。

 

3.研究発表「全盲児のハプティック知覚による触図の認知と模写に関する事例報告」(大内進)

 立体コピーで凸図にした塗り絵の線図を触察し、レーズライターを使って模写(再現)した事例について、研究発表がなされた。

  • 触って再現する事例。読み取る・受けとめる指導はたくさんする。しかし、文字・形にして表現する機会は少ない。
  • 視覚障害者が絵を学ぶことは無理だと思われている。その通念を破る事例。

 (2)探索および描画模写の過程

 表Table1の、探索時間・描画時間の総計にある「SD」とはなにか。

  • 偏差、バラつき具合を表す数値で、一般に平均値と対で示される。

 (3)探索時の手指の使い方

 触図における各探索場面での手指の使い方の分析で、模写しはじめて5分経過するあたりが図表では大きく空白になっているのはなぜか。

  • 塗り絵の顔面から頭頂部にかけて触図している時間に当たる。図を探っているところで、模写が停滞していることを表す。
  •  対象児童は手で見る学習絵本(テルミ)に親しむ機会があった。実験のとき以外でも、毎日のように絵を書いていた。
  • 対象児童は絵に興味があり、長く続けてきた蓄積があったので複雑な絵でも再現できた。条件が合わないと難しい事例ではある。

 

4.研究報告「『源氏物語』を触読する環境」(伊藤鉄也)

 立体コピーの資料について説明がなされた。

  • 立体コピーの資料を作成するときは、文字をしっかりと読み込めるように認知しやすい大きさに作る。すべての線を認知できる資料を作る必要がある。

 

 なお、第3回研究会は2016年5月東京において開催予定。