触読レポート(3)

日時:2015年7月10日(金)15時30分〜18時00分

場所:共立女子大学 本館14階1409研究室

触読者:Oさん

所属:共立女子大学文芸学部3年

聞き取り:伊藤鉄也(いとう・てつや)

記録者:関口祐未(せきぐち・ゆみ)

 

1. Oさんのプロフィール:

高校1年生のとき失明し全盲となる。

 

2. 点字の利用:

利用する。左手で点字を読みながら、右手で点字をうつ。

 

3.  立体文字の触読経験:

触読したことがある。平仮名の立体文字(横書き)を触読したことがある。

 

 4. 変体仮名立体文字の触読経験:

触読したことがある。昨年度(2014年度)より、授業で変体仮名の習得に取り組む。昨年度は、江戸時代版本『首書源氏物語 夕顔』を触読した。本年度は、江戸時代写本『竹取物語絵巻』の詞書や絵の触読に挑戦している。変体仮名の半分ほどが触読できる。

 

5. 古典への興味・意欲:

古文が好きで学習意欲が高い。将来も古典文学の学習を続けていくことを希望している。

 

6. 大学の授業での触読方法:

大学の授業では、チューターが隣についている。

『竹取物語絵巻』の詞書部分は、文字を拡大して立体コピーしたものを用いる。1行ごとに切り貼りして行間を充分に取り、文字を触りやすくしている。

『竹取物語絵巻』の絵の部分は、人物や景物の絵のなかから主要な線を選び、情報を整理する。そのようにして単純化した絵を、日本画修復の研究者である雁野佳世子(かりの・かよこ)氏、五十嵐有紀(いがらし・ゆき)氏、鷹濱春奈(たかはま・はるな)氏が描き起こし、カプセルペーパーに転写して立体化する。人物・景物の配置、男女の別や全体の構図をまず把握してから、人物を個別に拡大して、詳しい情報を読み取れるようにする。

変体仮名は、くずし字字典の文字を拡大し、立体コピーしたものを用いて学習する。変体仮名の字母で、画数の多いもの・複雑な字形のものは別に抜き出して、さらに拡大し字形を確認する。見出しの変体仮名の下に、点字で何の仮名文字かを示す。

立体文字のほかに、マジックで変体仮名を大きく書き、線のインクのにおいを嗅ぐことで字形を読み取る試みもしている。ただし、この方法を長時間続けることは健康上好ましくないので、あくまでも補助的に用いる。

 

7. ハーバード大学本『源氏物語』須磨を触読する:

教材:ハーバード大学本「須磨」冒頭1丁オ

◎触読した立体コピー本文(A4版)・・・文字を次の3種類の大きさに拡大した。原寸は半丁10行14字。

倍率122%=半丁10行14字

倍率150%=半丁5行14字

倍率200%=半丁6行12字

◎触読した文字・・・「よの中いと」(1行目)・「これより」(3行目)・「むかし」(5行目)など。

 主に左手の指先で読むが、両手の指先でも読む。文字の線にそって、上から下へ、指先を左右に小刻みに動かす。1文字の線を繰り返し触り、線の情報をさぐりながら字形を読み取る。

「よの中いと」の「い」=「は(八)」と迷ったが、「は」は2本の線が大きく離れていないので「い」と判断できた。

「これより」=「これよ」まで触読したが、「り(里)」はすぐにはわからなかった。同じ行にある、少し大きい「ありへむ」の「り(里)」も触った。「これよ」に続く文字であることを知らせると「り」とわかった。

「むかし」=すぐにはわからなかった。しかし、『竹取物語絵巻』詞書冒頭に、同じ字母の「むかし」があるのでそれも一緒に触ると、同じ「むかし」という文字だとわかった。

文字の大きさは、大きいほうが読みやすい。2倍(倍率200%)が読みやすい。1.5倍(倍率150%)も慣れてきたら読めるかもしれない。文字が大きすぎると、読み進めるうちに前に読んだ文字(内容)を忘れてしまう。そうすると、1.5倍の方がよいか。

 

8. 木刻凸字についての感想:

 現行の平仮名「あ」=わかった。直線を意識した字形のほうがわかりやすい。

現行の平仮名「お」=わかった。

「お(於)」=わからなかった。

1画ごとに段差がついているが、触読するときには書き順は関係ないので、かえってわかりにくい部分もある。

 

9. 全体の感想:

 授業を通して触読できる文字が増え、触読が楽しい。

指先につける筆があることを聞いて、文字を気軽に書くことができるようになりたいと思った。授業のリアクションペーパーもその場で書くことができ、書道もできるようになり、世界が広がるので。

 (触読レポート 2015.10.16)