『十帖源氏』は、江戸時代初期の俳人野々口立圃(1595年~1669年)の手になる『源氏物語』のダイジェスト版(梗概書)です。
ただし、『源氏物語』に出て来る和歌は、そのすべてを取り込んでいます。
そのために、『源氏物語』の縮約文(俗語訳)に無理が生じていることは否めません。
この『十帖源氏』は、130枚の挿絵が加わった絵入り本です。
ただし、ハーバード大学にある『十帖源氏』では、挿絵に彩色が施されています。
これについては、詳細が判明次第、報告します。
刊行されている『十帖源氏』の影印本には、以下のものがあります。
(1)野々口立圃著『十帖源氏 上・下』古典文庫第507・512冊(1989年)
(2)中野幸一編『源氏物語資料影印集成 11・12 野々口立圃著 十帖源氏 1~6・7~10』早稲田大学出版部(1990年)
また、『十帖源氏』の影印画像は、次の2つのサイトで確認できます。
(1)「国文学研究資料館【マイクロ/デジタル資料・和古書所蔵目録】」
ぜひ、原本を画像で確認しながら、ここに公開する翻字と現代語訳をご利用ください。
☆『十帖源氏』の多言語翻訳プロジェクト
2010年から、畠山大二郎氏がとりまとめとなり、さまざまな専門分野を背景にもつメンバーにより、『十帖源氏』の多言語翻訳を目指した翻字と現代語訳のプロジェクトを進めていました。
テーマ自体は科学研究費補助金による研究に引き継がれ、現在、英語・イタリア語・スペイン語・中国語・ハンガリー語・ロシア語・インド諸言語(ヒンディー語・ウルドゥー語・オディア語・パンジャービー語・ベンガル語・マラヤ―ラム語)など多くの言語に翻訳され、大きな成果をあげています。
本文の翻字・現代語訳の確認は、東京会場では2011年9月に第9巻「葵」まで、京都会場では2015年に第13巻「明石」までを終えました。
海外で翻訳された『源氏物語』は、アーサー・ウェイリーの英訳『源氏物語』(全6巻、大正14年~昭和8年)が用いられることが多く、その第1巻(「桐壺」~「葵」)に収録された「葵」巻までを翻訳していることがほとんどです。
そのため、東京会場では一度公開した「桐壺」巻から「葵」巻の現代語訳などの統一を目的として、2015年まで見直しをしていました。
あわせて、下記に掲載の凡例もその後にわかった問題点などを整理し、その内容を反映させたものとなっています。
この翻字と現代語訳を参考にして、世界各国の言語に『十帖源氏』が翻訳されることを願っています。
なお、現代語訳の全文は、ダウンロードできるようにしています。
『十帖源氏』は『源氏物語』の簡約です。しかし、これを機会に世界中の方々が『源氏物語』の世界を知っていただけることを楽しみにしています。
☆現代語訳『十帖源氏』のための凡例 《Ver.20161118》(PDF)
☆現代語訳データ
(1)《新版・十帖源氏「桐壺」》
→《新版・十帖源氏「桐壺」ver4-2》(PDF)(2016/12/13)
よりわかりやすくて正確な現代語訳を提供するために、折々に改訂版を作成し、公開します。
この第1巻「桐壺」を担当したのは、畠山大二郎氏です。
この『十帖源氏』の「桐壺」巻の現代語訳を改訂したのは、現在インドでヒンドゥー語訳に取り組んでおられる菊池智子氏からの質問に端を発しています。問い合わせを受け、それを検討している内に、より翻訳しやすい現代語訳に仕上がってきた、という経緯のものです。
今後とも、より多くの言語に翻訳される過程で、さらなる改訂をしていくつもりです。 なにか疑問点がありましたら、いつでもこのサイトの問い合わせ欄を利用してお問い合わせ下さい。
(2)《十帖源氏「帚木」》
→《十帖源氏「帚木」》(PDF)
第2巻「帚木」の翻字本文と現代語訳を公開します。
江戸時代に読まれたこの簡潔に縮約された『十帖源氏』では、和歌は一首も割愛されていません。お話が大幅にカットされているものです。
今回の「帚木」も、「桐壺」同様に畠山大二郎氏が丁寧に翻字し現代語訳をしたものです。
前回の公開時にもお断りしましたように、以下の点にご理解をいただきたいと思います。
ここに提示するファイルは、あくまでも、『十帖源氏』を外国語に翻訳する方々のことを配慮しての現代語訳です。
現代語を自由にあやつる日本人の方々のための現代語訳ではないことを、あらかじめお断りしておきます。
(3)《新版・十帖源氏「空蝉」Ver.2》
→《新版・十帖源氏「空蝉」Ver.2》(PDF)
第3巻「空蝉」の担当者は竹内佑希氏と淺川槙子氏(補訂)です。
凡例の見直しによる補訂を加え、表記を統一しました。
(4)《新版・十帖源氏「夕顔」Ver.2-2》
→《新版・十帖源氏「夕顔」Ver.2-2》(PDF)
第4巻「夕顔」の担当者は淺川槙子氏です。
凡例の見直しによる補訂を加え、表記を統一しました。
(5)《十帖源氏「若紫」》
→《十帖源氏「若紫」》(PDF)
第5巻「若紫」の担当者は菅原郁子氏です。
(6)《新版・十帖源氏「末摘花」Ver.2》
→《新版・十帖源氏「末摘花」Ver.2》(PDF)
第6巻「末摘花」の担当者は小川千寿香氏です。
凡例の見直しによる補訂を加え、表記を統一しました。
(7)《十帖源氏「紅葉賀」》
→《十帖源氏「紅葉賀」Ver.2》(PDF)(2013.08.01)
第7巻「紅葉賀」の担当者は阿部江美子氏です。
(8)《十帖源氏「花宴」》
→《十帖源氏「花宴」》(PDF)
第8巻「花宴」の担当者は小川千寿香氏です。
(9)《十帖源氏「葵」》
→《十帖源氏「葵」》(PDF)
第9巻「葵」の担当者は菅原郁子氏です。
海外で各種言語に翻訳された『源氏物語』を見ていると、アーサー・ウェイリーの英訳『源氏物語』(全6巻、大正14年~昭和8年)を使って、自分の国の言語に置き換えた「重訳」が多いことに気づきます。しかも、その第1巻(「桐壺」~「葵」)に収録された「葵」までを翻訳していることがほとんどです。
例えば、インドにおける8種類の言語による翻訳は、すべてが「葵」巻までです。これは、サヒタヤ・アカデミー(日本の国文学研究資料館のような組織)がプロジェクトとして取り組んだ成果の1つです。その際、アーサー・ウェイリーの英訳『源氏物語』の第1巻(「葵」までを収録)を、各言語の担当者に渡したことによる結果と思われます。
昭和3年に刊行されたフランス語訳とスウェーデン語訳、そして昭和5年に出たオランダ語訳、昭和17年のイタリア語訳、昭和30年のセルビア語訳などなど、いずれも「葵」巻までを翻訳したものです。つまり、アーサー・ウェイリーの英訳『源氏物語』の第1巻をもとにした翻訳であることは明らかです。
こうした実情を考えると、これまで進めてきた多言語翻訳のための『十帖源氏』の資料作成も、「葵」が終わったこの時点で、ひとまず整理をすることにしました。
以降、点検や確認を終えたものは《新版》として公開します。
(10)《十帖源氏「須磨」》
→《十帖源氏「須磨」》(PDF)
第12巻「須磨」の担当者は川内有子氏です。
(11)《十帖源氏「明石」》
→《十帖源氏「明石」》(PDF)
第13巻「須磨」の担当者は川内有子氏です。
☆活動記録
東京と京都の2か所で、『十帖源氏』を読む会を実施し、翻字と外国語に訳しやすい現代語訳に取り組んでいました。
■東京会場(2010~2015年まで)
毎月1回、新宿アルタ横のレンタルスペース「ボア」で、「桐壺」から「葵」までの確認を行っていました。
■京都会場(2013~2015年まで)
第12巻「須磨」と第13巻「明石」を読んでいました。
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