最近、特に意識しだしたことがあります。
それは「夢を持っているか 語れるか」ということです。
日々を想うと、夢を忘れ、それを放棄した生活を送っているのです。
日々を好い加減に過ごしているわけではありません。
直面する毎日の出来事や仕事には体当たりをしています。
しかし、それは時間と共に、ただ流されているだけなのです。
かつて、多くの夢を抱き、人に語っていました。
しかし今、それを実現しようとはしていない自分がいます。
自分を突き動かす力や熱気が、失せてきたことを実感するのです。
近年は、とにかく雑事に埋もれる生活に身を置いています。
夢を手放した感触に慣れていることに、はたと気づいたのです。
安全圏内で生きる、そんな狡い智恵を身につけた自分を見つけました。
手元には、膨大な『源氏物語』に関する情報があります。
これを次の世代に渡さないと、このまま埋もれてしまいます。
このままだと、私と同じ作業に30年以上を費やす人が出て来ます。
『源氏物語』に関する情報を受け渡していくシステムが必要です。
細々とでも、バトンタッチができる組織を作ることが先決なのです。
私が旗振り役に徹することが、まずは喫緊の課題として浮上しました。
NPO法人設立に向けて、具体的な構想をさらに練り直しました。
多くの人に支えられ、なんとか設立総会に漕ぎ着けることができました。
時の波に押し流されていく船を、どうにか繋ぎ留めることができたのです。
長く持ち越して来た夢が、ようやく実現します。
どうやら、私がまだ元気な内に始動できたようです。
この一連の流れの中で、自分の役割が見えて来ました。
私にとっては、消えようとしていたささやかな夢なのです。
試行錯誤の中で、この夢を大切に育てていきたいと思います。
次の世代に、若者たちに、夢を引き継げたら、と思っています。
2012 年10月 9日
特定非営利活動法人〈源氏物語電子資料館〉
代表理事 伊藤鉄也