研究の特色

 本研究は、写本レベルで対校・考察するのが特徴である。また〈保坂・国冬・東大〉は、その本文の一部は知られていたが、今回新たに全巻を翻刻するものである。

 本文異同は、単語レベルではなく文節単位で検討する。また、語彙の異同に重みをつけることによって、より文学作品の質にまで踏み込んだ諸本間の位相を知る手がかりを得ようとしている。対応する語句において、次のような重みとしての階級値を与えることにしている。

     ┏━一致……………完全一致〈1.0〉……不完全一致〈0.9〉
  各文節┣━部分的異文……欠落〈0.8〉……変化〈0.7〉……補入〈0.5〉
     ┗━全体的異文……欠落〈0.3〉……変化〈0.1〉……補入〈0.0〉

 こうした処理にパソコンを活用することは、大量のデータを短期間に処理できるのみならず、第三者による追認・再確認のためにデータを整理して提供できる利点も、合わせ持っている。

 予想される結果としては、〈河内本〉以外の関係が輻輳し、〈青表紙本〉と〈別本〉の捉え方を再検討していくことになると思われる。今回の大量データによる総点検により、〈青表紙本〉と〈別本〉の様態に新たな指針を提案できると思う。

 海外では、人文科学系の文字・画像・映像データベースは充実しつつある。しかし、『源氏物語』のそうしたデータベース化は、まだまだ試行錯誤の段階である。現在有益なものとしては、日本語と英語を対照させた形のテキスト・データベース(長瀬真理氏)が唯一である。もっともこれは、活字校訂本文をもとにしており、古写本レベルにまで遡って、より原典に近い形でのデータベースは、本研究が初めてとなるはずである


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英文