研究の計画

 本研究は2ヶ年計画で、次の5つのステップを踏むものである。

 初年度:
  〈1b異文判定用基礎データの作成〉
  〈2b異同に対する1件毎の重み付け作業〉
 2年目:
  〈3b異文判定用基礎データの作成(追加分)〉
  〈4b異同に対する1件毎の重み付け作業(追加分)〉
  〈5b分析結果にもとづく考察〉

 平成9年度は、第1年目として基礎資料の作成を中心とした、以下の研究計画を実施する。

 現在、『源氏物語別本集成(全15巻中8巻まで刊行)』と『保坂本源氏物語(完結)』関連の作業用データが手元にある。本研究で使用するデータの半分は、すでに調達できていることになる。そこでまず、異文判定用の基礎データの整備をする。特に〈大島・陽明・保坂・尾州〉の本文を確定するのが急務となる。古写本を読みながら本文データをパソコンに入力した後に、その校正と文節の切り直しを行なう。あくまでも写本に忠実な翻刻本文をもとにした本文対校を行うのが本研究の特色であり、この基礎データ作成が重要なポイントとなるのである。意味不明な語句や、説明的な傍注の混入と思われるものも、書かれたままの、あるがままの本文の姿で校合することによって、写本レベルでの本文の位相が明確になるはずである。

 次に、完成したテキストデータをもとにして、4本を用いての異文判定作業を行なう。『源氏物語』の総文節数は約214,000文節ある(陽明本で換算)。この本文データに対して、パソコンを活用して本文異同の重みを付与していく。
 事前に、作業用のソフトウェアを開発しておくことは必定である(下図は私案の一部である)。

 大島本と河内本を基準として、対校本文1件毎にその異同の重みを判定していく。この作業は古文に対する専門的な知識と文章の解釈力を必要とする。これらの作業は、膨大な時間を要するものである。古写本が読めてパソコン操作に習熟していること、そして古語に対する理解が必須となる。研究協力者への補助謝金が、今回申請する補助金のほとんどを占めることとなったのは、ひとえにこのためである。


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