研究の背景

 現在の『源氏物語』は、藤原定家が校訂した、いわゆる〈青表紙本・大島本〉で読まれ、そして研究されている。『源氏物語大成』(池田亀鑑、中央公論社刊)は、その本文研究の結実であり、昭和の基本資料となっていた。しかし、本文批判となると依然として不徹底のままである。

 平成元年より翻字集成作業を行なっている『源氏物語別本集成』(伊井・伊藤・小林編、おうふう刊)は、〈青表紙本〉でも〈河内本〉でもない〈別本〉と呼ばれる一群の本文を、源氏物語古写本本文のデータベース化と並行して刊行している。平成5年より刊行された『新日本古典文学大系 源氏物語』(岩波書店)では、これまで〈別本〉とされていた本文が一部に採用された。その底本である〈大島本〉も、最近、忠実な影印本として刊行された(室伏信助、角川書店)。

 本文研究が見直される中、『保坂本源氏物語 別巻 本文索引』(伊井・伊藤・中村編、おうふう刊)は、〈別本〉をもとにした初めての総索引となるものである。

 正確な本文や索引が提供されだした今、広く流布するいわゆる〈青表紙本〉とは一体何かが、改めて問われているところである。

表紙

概要

背景

目的

特色

計画

英文