以下、代表理事のブログである[たつみのいほりより]からの一部転載です。
NPO法人〈源氏物語電子資料館〉を設立します
かねてより準備を進めていたNPO法人〈源氏物語電子資料館〉に関して、所轄の役所へ設立のための最終的な確認に行って来ました。
担当部局の方からは、詳細で丁寧な助言を数多くいただきました。
特に、平成23年6月15日に「特定非営利活動促進法の一部を改正する法律」(平成23年法律第70号)が成立し、平成24年4月1日より施行されたため、私が作成して持参した書類では、何カ所か修正が必要になりました。そうした細かな点も、懇切丁寧にチェックしてくださいました。ありがたく感謝しています。
そして、夢のある計画ですね、と励ましてくださったことばは、計画から実施にかけて迷走した私にとって、何よりもの労いのことばとして響きました。その意味でも、夢の実現がスタートしたことを、ようやく実感し出しました。
今週末に、東京の新宿で設立総会を開催します。
申請までに至ったのは、中村一夫氏と畠山大二郎氏はもとより、神野藤昭夫先生の教え子のみなさんの力が集結できたからこそです。私が代表者を務めますが、実際には会員のみなさんに支援していただき、会員のみなさんが中心となって活動を展開する中で成果を上げていくことになります。
追って、報告やご協力のお願いを掲載していくつもりです。
今の予定では、来年2月の認定を目指しています。
まずは、NPO法人〈源氏物語電子資料館〉を設立するにあたり、その目的と趣旨を記した案文を掲載します。
いろいろとご教示をいただければ幸いです。
■ 目 的 ■
『源氏物語』の本文に関するデータベース化は、『源氏物語別本集成』と『源氏物語別本集成 続』の刊行を通して、約22万レコードのデータベースとして構築が進行しています。今も更新の手が加えられ、日々成長しているデータベースです。
本法人は、『源氏物語』の本文データベースに関連するあらゆる資料及び情報を、調査・収集・整理・修正・追補することを活動の原点とします。そして、その知的資産としての情報の維持管理を次世代に継承する中で、さらなるデータベースの発展に資することを目的とする会です。
併せて、『源氏物語』が海外でも幅広く理解されることを願い、『源氏物語』のダイジェスト版の多言語翻訳や海外の研究者との懇談会も実施します。このような、国際的な日本文化の理解を深める活動にも取り組みます。
■ 趣 旨 ■
『源氏物語』に関する研究論文は、国文学研究資料館の論文目録データベースによると、年間500本も発表されています。日本文学の中では、もっとも人気のある研究対象となっています。
ただし、その9割以上が印刷して刊行された校訂本文を読んでなされています。この流布本だけで研究されている現状は、改めて再検証する必要があります。そのためにも、墨で書写された写本を基にした、新たな各種翻字本文と校訂本文の提供によって、『源氏物語』の受容をさらに幅広いものにしていきたいものです。
そこで、以下の5つの活動を展開することで、本会の目的を達成することを目指します。《活動1》 変体かなで書かれた数多くの写本を読み解き、翻字し、データベース化することで、さまざまな本文の異同が容易にわかる研究環境を構築します。これは、この世に存在する『源氏物語』の写本・版本・活字本など、ありとあらゆる本文を対象とします。ここで作成されるデータベースは、次世代に引き継がれる知的資産となります。
《活動2》 『源氏物語別本集成 続』が第7巻で休刊となっているため、《活動1》の成果を踏まえてその継続も推進します。
《活動3》 平安時代の『源氏物語』の写本は、一冊も伝わっていません。そこで、鎌倉時代に写された「池田本」と呼ばれる写本を基にした校訂本文を新たに作成し、昭和以降広く流布する「大島本」に代わるものとして提供します。新しい流布本を作ることで、『源氏物語』のさらなる普及のための活動を展開します。
《活動4》 『源氏物語』のダイジェスト版の多国語翻訳に取り組みます。『源氏物語』は、現在31種類の言語に翻訳されています。そこで、最終目標は31言語へ翻訳することにあります。これは、翻訳を通して国際文化理解を深める役割も担います。
《活動5》 『源氏物語』をテーマとした講演会、懇談会、輪読会、写本を読む勉強会、そして『源氏物語』関連のグッズ販売などを通して、『源氏物語』に対する幅広い理解を共有する活動も展開します。