本研究は、平成9年度の科学研究費補助金重点領域研究「人文科学とコンピュータ」の応用研究において、テキスト処理としての研究課題名「源氏物語古写本における異本間の位相に関する研究」(課題番号d09204240)で、伊藤鉄也が行なっていた単独研究の後半部分にあたる。
これまでに、〈大島・陽明・保坂・尾州〉の本文を確定し、異文判定基礎データの整備をしてきた。古写本を見ながらの、校正と文節の切り直しなどの作業である。また、その4本を用いて、異文判定作業を行なった。『源氏物語』の総文節数を約214,000文節(陽明本で換算)とし、パソコンのデータ処理用のシート(「研究計画・方法」の図参照、平成9年度開発)に本文異同の重みを付与していくものである。
前年度の異文判定作業経費は、1件の処理単価を0.5円とし、その4本分から算出したものである。しかし、これらの作業には、膨大な時間のみならず、古写本が読めてパソコン操作に習熟していることや、古語に対する理解を必要とする。事前に対策を施したが、実作業に入ってからは各種データの統一的な調整や保留データの扱いに忙殺された。そのために、研究協力者への実働時間の負担が予想の3倍以上にも達した。したがって、本年度はこうした実情に合うようにするために、データ処理作業に要する時間で作業経費を算出することにした。もちろん、初年度とほぼ同じメンバーでデータ処理を行なうために、前年度より迅速な作業の進捗を見込んだ上での算出をしている。補助要員としては、3名をあてている。作業分担者が多すぎると、データ処理の統一性に欠けるからである。データのばらつきを最小限にして、精度の高い情報を得るために、このような処置をとっている。
平成9年度は、4種類の古写本を対象にしてデータ処理を進めた。2年目の平成10年度は、当初の予定通り、残った2種類の古写本の異同を扱うことにする。この、基礎データの作成については、前年度は手持ちのデータを大量に転用できた。しかし、本年度分は新規の資料であるために、一から作成するものが多い。経費が増額となった理由でもある。
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