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新典社

刊行にあたって

 薫風に乗せて刊行された世界的傑作「源氏物語」第一期十一冊は、刊行と同時に、国内はもとより、世界各国の大学や各種図書館にも大反響をまき起し、信頼できる唯一の複製として、国際的名声を博しております。これも一重に、古典を愛して止まない皆様方のご声援の賜物と深く感謝しています。
 この原色版による「源氏物語」は、現行最善本といわれる宮内庁書陵部蔵の青表紙証本「源氏物語」全五十四帖を、桝形・帖別の原形のまま、美しい筆跡そのままに、新しい技術の粋を駆使して複製したものです。
 各帖末尾には、当代一流の権威五十一名の先生方にお願いして、新資料に基づいた適切で明解な解題・登場人物関係図・注をつけていただき、正しい源氏物語理解の一助としました。
 別冊として、監修者の山岸徳平・今井源衛両先生が、源氏物語を展望するためのもっとも親切な入門書として、新しく書きおろされた「源氏物語解題」(「源氏物語筆者之数」〃影印〃付)と、平安末期に二十六の巻序で流布していたと思われる有名無実の「雲隠の巻」を、後人の筆ではありますが、これをつけ、五十六冊としました。
 小社が自信をもってお贈りする「源氏物語」に、ご期待下さい。(株)新典社


 監修者のことば

 

学界への善本提供と一般学徒のために!

 

 山岸 徳平

 古典に関する文運発展の業績中に、藤原定家の明月記と青表紙源氏物語、三条西実隆の実隆公記と源氏物語青表紙証本とは、相対している。その青表紙系本文は、湖月抄その他の刊本などで、広く流布してはいるが、転々書写の誤謬は免れない。ここに、実隆が多年校訂した善本の青表紙証本を、原型のまま複製した。
 これは、学界への善本提供と同時に、一般学徒にも写本を知ってこれを愛し、その閲読錬達に資したい念願によるものである。

重責に心ひきしまる思い! 今井源衛 

 青表紙本をぬきにして、源氏物語を語ることはできない。それは妖艶の詩美の大歌人藤原定家が定めた、簡潔で余情ゆたかなテキストである。
 このたび数多い青表紙本の中でも、ことに確実な証本である書陵部本が、三条西実隆や岩山道堅らの名蹟をそのままに、五十四帖全巻が複製刊行されることとなったのは、学界はもとより、広く文化を愛する人々のために、まことに嬉しいことである。書陵部の英断に感謝するとともに、監修者の一人として、その重責に心のひきしまるのを感じている。

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